『炭撥ねて雨の匂ひの濃かりけり』


あれは底冷えのする雨の日、
鎌倉のお風入れの季節。
お風入れは様々なお寺の宝物を陰干しをする行事である。
普段はめったに見ることのできない、
仏像、掛け軸、書画など展観できる。
薄暗い寺院の奥で、火鉢の炭が熾き火となっている。
雨の日ゆえに炭が爆ぜる。
深閑とした境内にぱちっと炭が撥ねる音。
雨に匂ひはない。炭が雨に憑依するのだ。
雨が激しく降れば降るほど匂ひが濃くなる。
炭の匂ひは雨の匂ひ。
雨と炭との逢瀬。
そんな思いを作句した。


※季語炭(冬)



※熾き火(おきび) 
炭や、まきが、熾きの状態になったもの。


※逢瀬(おうせ)  
男女があうこと。


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