本能寺


膝枕の信長(舘ひろし)は、酩酊となり、しばし昔を懐かしむ。
尾張のうつけと言われた頃は、そなたの膝枕で昼寝したものよ」
お濃(和久井映見)は優しく応える。
「殿は、今もうつけでございます」
「殿は、昔はよく笑いました」
まさに、おしどり夫婦のような、信長とお濃。
心の通じあった夫婦に、本能寺の危機が目前に迫っていた。
光秀(坂東三津五郎)は、号令する。
「天のため民のための戦ぞ」
光秀にとって、信長への謀反は、大儀の戦であり、
私利私欲の戦ではない。


敵は本能寺にあり


明智軍は時の声を上げ、本能寺に攻め入る。
激しい鉄砲の応酬のすえ、
やはり、多勢に無勢の信長軍は明智軍に攻め立てられる。


「殿は地獄、私は極楽、これでは死に別れ」


お濃は、自ら前面にたち太刀を振るう。
夫の信長も妻の意気に応える。
「あの世とやらで、またまみえようぞ」
信長が鉄砲に撃たれ、崩れ落ちる。
自らが、戦国の戦に革命をもたらした、鉄砲に倒れる因果。
「お濃痛いのう」
「このわしも死ぬのか」
己れを神と自画自賛した信長はなく、人間信長となる。
そして、お濃もまた光秀軍の鉄砲に撃たれる。
今回の和久井映見のお濃は、自信に満ちた女の凛々しさがあった。
それは、信長への迷わぬ愛の力でもある。
本能寺は炎に包まれ、
信長は、現世から消える。
天魔、信長を退治した光秀は、魂が抜け、自害さえ試みようとする。
それを止めたのが、妻のお槙(烏丸せつこ)であった。


「信長は死んだ。わしはそれだけでいいのだ」


光秀は心の内を打ち明ける。
しかし、お槙は、光秀に天下を取るよう懇願する。
夫を褒めることで、光秀にやる気をおこさせる。
光秀は、どちらかといえば気性のおとなしいお槙から、
「天下取り」の言葉を耳にして驚く。
一方、六平太(香川照之)から信長討たれるの報を聞いた、
千代(仲間由紀恵)は、てきぱきと、銃後の守りをかためる。
そして、いつもながら、一豊(上川隆也)の身の上を心配する。
一豊も千代からの手紙が、二日届かぬと寂しさをかくさない。
そんな中、一豊は、信長討たれるの密書を、偶然手に入れ、
それが、秀吉(柿本明)の中国大返しの契機となる。
千代が「お腹がすきました」「腹が減っては戦はできませぬ」
を連発していたのが、かわいらしくかんじた。
そこが、小賢しさに溺れない、千代の愛嬌なのではないか。


濃、槙、千代、今回は、三人とも女丈夫であった。
信長と濃、光秀と槙、そして一豊と千代、
それぞれの、夫婦の姿が印象に残る「本能寺」であった。


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