萬斎親子鷹
野村萬斎の対談で目に留まった言葉があった。
「正しくプログラミングして、正しく機能するようにしてあげて、
世の中に出してあげる。
表現方法を知らない子供に、いきなり個性といっても始まらない」
以前、野村萬斎が息子に狂言の稽古をつけている場面を、
拝見する機会があった。
厳しく、真剣な師弟の姿がそこにあった。
その厳しさに、萬斎の息子への愛情を感じた。
萬斎自身、師匠である野村万作との関係を、
「お父さんという意識より師匠でしたね」
と語っている。
日本の伝統芸能では、こうした、厳しい師弟関係ゆえに、
代々親から子へと芸が、継承されてきたのであろう。
歌舞伎の世界もしかりである。
NHKアーカイブスで、松本幸四郎の襲名披露を放送していた。
父白鸚が幸四郎(当時の染五郎)に、
「弁慶」の稽古をつける場面が印象的だった。
父から息子へ、渾身の稽古をつけていた。
すでに、父白鸚は病魔に侵されており、
幸四郎襲名の一年後、他界している。
私は、親子鷹の凛々しい姿に感銘した。
萬斎が語る「正しくプログラミングする」ことは、
古典芸能には欠かせないことだろう。
そこには、プログラミングする側とされる側の、
信頼関係が不可欠だ。
萬斎は語る。
「狂言でいえば、師匠となる手本がいる。
魅力的な人間と触れ合うことで、本人も魅力的になる」