冬吾の魅力
「純情きらり」のヒロイン桜子(宮崎あおい)もかわいいが、
何故か私は、杉冬吾(西島秀俊)の飄々とした生き様に、
惹かれてしまう。
杉冬吾は、芸術家であり無頼派の男だ。
太宰治を、モデルにしているとも云われている。
女に優しく、女にもてるが、女に少々だらしない。
今時の言葉で表現すれば、少々ダメ男なのかもしれない。
そんな、冬吾にしっかり者の笛子(寺島しのぶ)は惚れてしまう。
冬吾の津軽弁は優しく、笛子に響く。
この杉冬吾は、どこか同じ連続テレビ小説の「あぐり」の、
あぐり(田中美里)の夫、望月エイスケ(野村萬斎)に似ている。
エイスケもぶらりと家を出ると、何ヶ月も家に帰らない。
放浪癖のある男だ。
両人に、共通するのは、女性に優しくモテルところだ。
エイスケ演じる、野村萬斎のそよ風のような笑顔が、
印象的だった。
冬吾にエイスケ、二人の漂白する魂を女たちは、捕まえようとする。
しかし捕まえようと、すればするほど、彼らの自由なる魂は、
女たちの手からすり抜けてしまう。
山下久美子の「バスルームから愛をこめて」ではないが、
「男なんてシャボン玉、きつく抱いたら壊れて消えた」
そんな女たちの溜息が、聞こえてきそうだ。
二人の、破天荒な生き様が、女性にとって魅力なのかもしれない。
文学では、山頭火、或いは西行も、
自らの、漂白の魂の赴く儘生きた無頼の吟遊詩人だった。
冬吾にエイスケ、そして寅さんのように、
男はどこかさすらうことに、憧れている。