堀威夫、大スターを発掘した男


かつて、「スター誕生」というオーデション番組があった。
山口百恵桜田淳子森昌子中森明菜小泉今日子
綺羅星のごとくスターを輩出させた番組。
様々な芸能プロダクション、レコード会社が、
明日のスターを発掘しようと参加していた。
その中に、ホリプロダクションも参加していた。
さらに、特筆すべきは、当時の芸能界の最大勢力、
渡辺プロダクションが、「スター誕生」には、
参加していなかったことだ。
当時、芸能プロの構図は、渡辺プロ対他の芸能プロであり、
所謂、ナベプロは圧倒的な強さを誇っていた。
60〜70年代の新春かくし芸大会の出演者を見れば、一目瞭然だ。
ナベプロタレント、オンパレードであった。
30年を経た現在、ホリプロナベプロと肩を並べ、
株式も上場する、芸能プロダクションに成長した。
ホリプロの成長は、何よりも優秀な人材の発掘と、その育成にある。
堀威夫は語る。


「タレントを一発当てるのはプロじゃない。当てた後どう引っ張れるかだ。」


ホリプロタレントの真骨頂は、和田アキ子だろう。
和田アキ子は、確かにデビュー当時から歌唱力もあったが、
けして、爆発的な人気があった訳ではない。
むしろ、抜きん出た大柄な体型と、少女時代不良で鳴らしていたことを、
売りにしていた感がある。
その和田アキ子は芸能生活35年を過ぎて、なお第一線で活躍し、
堀威夫の子息が社長に就任してからも、ホリプロ一筋で歩んでいる。
和田アキ子が、堀威夫に全幅の信頼を置いているからだろう。
堀威夫は、和田アキ子を上手に、引っ張てきた。
最近では、石原さとみも昨年の大河ドラマ義経」の活躍をはじめ、
アイドルの領域に留まらず、演技派としても順調に育っている。
深田恭子も「富豪刑事」などで、独特のキャラクターと存在感を出している。


堀威夫は、ニートのことを社会が豊かになった副作用と語っていた。
またニートの原因を、今の日本では何もしなくても生きていられることによる、
緊張感の欠如によると、指摘した。
村上龍は、堀が、
「今の若者は・・・」
「今の若いやつは・・・」
という表現を一切使わなかったことに、感心している。
大人は、いつの時代も「今の若者は・・・」と言っている。
言っている当人も、かつて若い頃、
「今の若者は・・・・」と言われていたに違いない。
村上龍の言葉を借りれば、堀威夫のメッセージは、
完璧な人間などいないということか。
完璧でないからこそ、可能性があるということか。
山口百恵もデビュー当時は、桜田淳子に大きく水を開けられていた。
しかし、阿木耀子、宇崎竜童、あるいは、大林宣彦監督、
名プロデューサー酒井正利との出会いを得て、
その類(たぐい)まれな才能を磨かれ、スターとして光輝く。
堀威夫の素晴しいところは、磨けば光る原石を見つけ出す目にある。
更に、堀威夫は、未完成の原石を、磨き上げるプロであるということだ。


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