三好達治


夏の日差しが、肌に痛い真昼のこと、
ふと、地面に目をやると蟻たちが、トンボを運んでいた。
餌としてトンボを、自分達の巣に運んでいるのだう。
まるで羽を広げたままのトンボは、大きなグライダーのようだった。
蟻は、人間のようにも見えた。
大きなグライダーを持ち上げ、運ぶ人間たち。
そんなことを、想像していると、
三好達治の「土」という詩を想いだした。


『土』

蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのようだ


蝶の白い羽をひいて行く蟻、
その姿を「ヨット」と表現する詩人の眼。
見事な比喩だ。
私も、トンボを引いて行く蟻を「グライダー」に譬えた。
しかし、三好達治のような、巧みな比喩とはならない。
詩人には、私達と同じく、物を見る機能しての眼と、
物を心で捉える、もう一つの眼があるのだろう。


*「満腹の蚊のゆつくりと打たれけり」 近藤酔舟 『吾妻橋』所収


 諧謔(かいぎゃく)の面白さが光る俳句である。
 大岡信の「折々のうた」に掲載されいて、目にとまった。
 三好達治も俳句をの秀作を、多く残している。


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