白鶏は貴婦人


NHK教育テレビ「新日曜美術館」の若冲・プライスコレクションの全貌
を視た。
伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)は、江戸中期の日本画家。
身の回りの動植物をモチーフにした作品が多い。
濃彩の花鳥画を得意とし、「仙人掌群鶏図襖」などが代表作である。


伊藤若冲の作品の中で、特に目を惹いたのは「老松白鶏図」であった。
白鶏の均整のとれたプロポーション
流麗な太極拳のごとき姿。
透き通るような羽。
絶妙な白のグラデーション。
白は白ではあるが、そこには、繊細な陰影が施されている濃淡の妙技がある。
西陣織の技法からヒントを得た、
裏彩色の技法、それこそが白鶏に、絶妙な生命感と躍動感を生み出す奥義だ。
貴婦人のような白鶏が見事だ。
凛とした気高さが漂ふ。
ふと、日本舞踊の鷺娘を彷彿させた。


さらに、「鳥獣花木図屏風」の、モザイク画、升目と呼ばれる技法は、
現代のモダンアートにも影響を与えている。
例えば、宇多田ヒカルのプロモーションビデオを手がけ、夫でもある、
紀里谷和明氏は、若冲の「鳥獣花木図屏風」に触発されている。
彼は、プロモーションビデオを仏教的なモチーフをデジタル化し、
点を繋げ創作したと語っていた。
21世紀の視覚芸術の旗手、紀里谷和明が芸術家若冲を評価している。
紀里谷氏は、画家伊藤若冲にシンパシーを感じるとも語っている。
21世紀にも通じる新しさを、伊藤若冲は持ち続けている。
紀里谷和明氏をはじめとした若手アーティストを刺激しつつ、
彼の日本画は、モダンアートに生かされていると感じた。


*プライス氏の日本美術の鑑賞方法を、引用する。
「日本美術を鑑賞する際、光の果たす役割は非常に重要である。」
 谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)通じる言葉だ。


*「若冲と江戸絵画」展が、東京国立博物館 平成館(上野公園)で開催中。
 平成18年7月4日(火)〜8月27日(日)


*番組の中の、檀ふみの白地に薄青の柄の着物が、
 涼しげでよく似合っていた。

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