磯おばさんの秘密

言論統制の時代、冬吾(西島秀俊)たちの展覧会も当局の検閲を受ける。
冬吾の座右の銘は「美に殉じる」こと。
戦争画を描かねばならなくなったとき、仲間に、
「見たまま描けばいい」
と力強く励ました。
磯(室井滋)も、
我が子和之に、芋の煮っ転がしを作ったり、あなたの絵が好きだと励ます。
磯、桜子(宮崎あおい)笛子(寺島しのぶ)たちは、物心両面で、
冬吾たちの展覧会開催の手助けをする。
展覧会は、開催されたが二日目に当局の中止を受ける。
和之が磯に自分の絵を渡すところが、感動的だった。
「ここまでこぎつけたのは、おばさんのおかげだ。」
別れ際、和之に振り返る磯の顔、母と名乗れぬ憂いの顔が切なかった。
苗子の赤ちゃんが、網膜炎の疑いがわかる。
有森家の娘たちに、新たな試練が降りかかる。


画家志望の和之と父親(中山仁)の親子の断絶に、
夏目漱石の小説「それから」の、
主人公代助と彼の父親との関係を、彷彿させた。
純情きらり」では、画家志望の和之を父は理解するが・・・
代助は、帝大を卒業するが、本を読んだり、散歩をしたり、
今でいうところのニートのような生活をしている。
そんな、息子を実業家の父は理解できない。
代助は、パンの為の労働はしたくないと思っている。
この高学歴ニートの考え方は、富国強兵の明治という時代、
さらに、江戸時代から生きてきた父の世代と、波長が会わない。
冬吾達も、軍国主義の時代では、アウトサイダーだ。
私は、当時の体制側の考えが全て誤りとも思わないが、
冬吾達、芸術家を抱擁できる母親のような社会、
あるいは、彼らを見守るような父親のような社会、
そうした、精神活動の余地のある社会が、望ましいのではないか。


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