大人の酒
大人の酒に憧れていた時代がある。
大学時代、ほとんど、焼酎とビールを飲んでいた。
質より量の酒。
一気飲みとちゃんぽん。
寺尾聡のLP[リフレクションズ」をよく聴いていた。
目指すダンディズムは、遥か彼方に輝いていた。
そんな私が、憧れていた酒が、モルトウィスキーだった。
その琥珀色の液体に、なにかしら大人の男の渋さを感じた。
レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の主人公、
フィリップ・マーロウ、
007シリーズ初代ジェームス・ボンド役のショーン・コネリー、
「カサブランカ」のハンフリー・ボガート。
そんな男達の、酒の嗜みにしびれていた。
モルトウィスキーがお似合いの男たちだ。
彼らの、大人の男の色気のように、
ピュアモルトウイスキーの香りは、芳醇だ。
淑女に愛を囁く、紳士のように、
礼儀正しく、それでいてセクシーな香りだ。
カクテルのように、鮮やかな彩色ではないが、
モノローグだが、奥が深い。
口の中で、独特の香りと味がまず広がり、
更に、喉一杯に熱い吐息が広がるのだ。
鷹揚とした琥珀色の酒。
兎も角、ロックで飲みたい。
琥珀色の美酒の、滑らかにして力強い味わい。
ようやく、最近モルトウィスキーを飲める男になった。
サントリー山崎が好きだ。
白洲次郎には、程遠いが・・・・
スコッチウイスキーが似合う男になりたい。
いま少し、心に余裕のある男になりたい。
憧れの男、それは「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵。
中村吉右衛門の鬼平は、軍鶏鍋を肴に、実に美味しそうに酒を飲む。
私も軍鶏鍋と辛口の日本酒が好物だ。
*007は、ドライ・マティーニを好んで飲んでいた。
*ご交誼をいただいている、80歳の医大の名誉教授は、
「スカッチ」と言って、スコッチウイスキーを注文する。
左党の年輪を感じる。
*石川さゆりに「ウイスキーが、お好きでしょ」という歌がある。
ウイスキーが お好きでしょ
もう少し しゃべりましょ
ありふれた 話でしょ
それで いいの 今は