植草甚一

知的好奇心とは、学校の教科書から目覚めることはなかなか難しい。
むしろ、教師や親から半強制的に詰め込まれるのではなく、
自由な大空を羽ばたくように、伸び伸びとしたものである。
20代の頃、植草甚一(JJ氏)に巡りあった人は、
かなり知的幸福を享受したのではないか。
雑学をひけらかし、上から啓蒙するのではなく、
ポップな語りかけるように綴った文体。
粋な文書ということでは、同じ東京日本橋生まれの池波正太郎もそうだ。
両人とも散歩が好きな物書きだった。


私も散歩が好きなのだが、20歳の頃、
友人から電話があり、
母が、「いま散歩中です」と答え、
友人に苦笑されたことがある。


そんな私にとって、植草甚一の「ぼくは散歩と雑学が好き」は、
新鮮な知識が飛び出てくる、玉手箱のような本であった。
私は、彼の真似をして、友人へお気に入りのコラージュで、
年賀状を作り、喜ばれたことがある。
チョッとサイケなデザインにした覚えがある。


映画、ジャズ、本の趣味など、彼に影響された。
FM放送で、「アスペクト・イン・ジャズ」や「クロスオーバー・イレブン
などを聞いたものだ。
マイルス・デイビスジョン・コルトレーンといった、
モダンジャズも当時、初めて知った。
雑誌「宝島」も読んだ。
この雑誌は、紙の質はわるかったが、それがまた、ガリ版ぼくてよかった。
ユリイカ」「現代思想」「スイングジャーナル」などもぱらぱら読んでいた。
茶店で、コーヒーを飲みながらの読書は孤独で楽しかった。


植草甚一の飄々とした生き方、
知的自然体に憧れる、今日この頃だ。
そういえば、タレントのタモリが、
植草甚一の没後、
彼の、レコードコレクションを全部買い取ったという逸話がある。
たまさか、タモリも彼から影響されたひとりなのかもしれない。
植草甚一池波正太郎
様々な趣味の、水先案内をしてくれる粋人だ。
この二人のような、伯父さんがいたらさぞかし楽しいだろう、
そんなことを、思う深夜3時である。

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