少女漫画の魅力

山岸涼子竹宮恵子萩尾望都、この三人の少女漫画を、
20歳の頃、友人の女子大生に薦められ集中的に読んだ。
読後に覚えた驚きを、今も覚えている。
それまでの、少女マンガのイメージは、大きなつぶらな瞳に、
キラキラ星が輝いている、そんな少女趣味であった。
しかし、この三人の漫画家の登場人物の、
心理描写は、ポエジーそのものであつた。
山岸涼子の「日出処の天子
竹宮恵子の「風と木の詩
萩尾望都の「ポーの一族
は、鮮烈な印象を与えた。


更に、大島弓子の「綿の国星」も少々男性には理解不可能な
ところもあったが、恰もメルヘンのワルツが、頭の中を流れる作品だった。
水彩画のような、クレパスのような中間色の世界。
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を彷彿させる。
綿の国星」の、須和野時夫とチビ猫。
手塚治虫の、ブラック・ジャックピノコ
チビ猫とピノコ、どちらも、
慕っている男性と結ばれると信じている。
少年漫画のどちらかといえば、エネルギッシュで直線的な
主人公、特に、本宮ひろ志の主人公が好きだった。
俺の空」「男一匹ガキ大将
爽やかで、女の子に少し晩熟(おくて)で、友情に厚い少年、青年が、
理想だった。


そんな私の感性に、「ポーの一族」のヴァンパイア、エドガーの孤独は、
詩人、ランボーの孤独にも似たものを感じた。
永遠の命を与えられたエドガーの絶対0度の心臓を、
私は、キルケゴールのように、哲学した。
永遠の命を与えられたヴァンパイア、エドガー。
全ての愛する者は、彼より先に、死んでしまう悲劇。
選ばれし者の運命(さだめ)
ポーの一族」の主調音は、永遠を生きる者の、
果てしない孤独の、バロックだ。
いや、モーツアルトの未完の「レクイエム」の調べかもしれない。


山岸涼子の「日出処の天子」の聖徳太子は、超能力(霊的力)
を持ち同姓愛の匂いもある。
と、いうより太子の心の孤独を埋める人間が、たまたま同性だったのだろう。
聖徳太子像に新機軸をもたらした漫画である。

竹宮惠子の「風と木の詩」は、ソネットのようなマンガだった。
エルメスの道」竹宮恵子も面白い。
エルメスの歴史を、竹宮惠子が華麗に描いた漫画だ。
つれづれに、思いつくまま印象に残った少女漫画家について、
書いてみた。
彼女たちの漫画は、純文学漫画だと思う。


大島弓子は、アーティストの「スピッツ」や小説家の吉本ばななにも、
 影響を与えている漫画家だ。


*少年と少女の境のトワイライトゾーン、危ういモノセックスが、
 「時をかける少女」の原田知世にはあった。
 ボーイッシュという言葉で括るだけでは、済まない魅力。
 10代のある時期の彼女には、未分化の中性の魅力があった。
 原田知世の女優人生は、
 「時をかける少女」の彼女に付いたイメージとの闘いでもあったろう。