奈良美智、アルフォンス・ミュシャ


新日曜美術館」のアートシーンで、
奈良美智アルフォンス・ミュシャの美術展の紹介があった。
奈良美智(ならよしとも)は、五年程前に神戸に旅行した折、
偶然、彼の展覧会を目にして立ち寄った。
私の中の、子供の絵のイメージは、
いわさきちひろの淡い、優しい感じの子供の印象があったので、
奈良美智のつり目の小さな女の子の絵に、少々違和感を覚えた。
ただ、どこか子供の心象の本音を表現しているようにも思えた。
ことさら、子供を美化せずに、あるいは、子供を大人の愛玩として、
表現するのではなく、一つの人格として描いている。
子供にも存在している、複雑な心の動きや、
心の闇も描いているような印象をもった。
下膨れのほっぺたが、どこかペコちゃんに似ている。
作者の奈良美智が、1959年生まれであることから、
多少は、不二家のペコちゃんの影響は受けているのかもしれない。
そして、よくよく見ると、つり目の女の子もカワイイと思うようになった。


アルフォンス・ミュシャは、日本史の教科書の、
与謝野晶子の「みだれ髪」の挿絵に似ていると思っていた。
彼の作品の華やかな貴婦人の姿は、宝塚歌劇団の舞台を彷彿させる。
ミュシャは、アール・ヌーボーを代表するグラフィックデザイナーであり、
星、花、宝石、で女性を表現している作品が多い。
フランスの人気女優、サラ・ベルナールの注文をうけて描いた、
ポスター「ジスモンダ」で一躍有名になった。
作曲家のスメタナと同じく、チェコ独立を切望した芸術家だ。
優美にして華麗な彼の作風と違う一面が、チェコへの愛国心にある。
彼は、骨太な精神の男でもある。
無頼派の同時期の画家、ロートレックとは違う、
レジスタンスとしての生き様を、ミュシャに感じる。
私は気がむくと、白金の旧朝香宮邸、東京都庭園美術館に足を運ぶ。
こうした、アール・ヌーボーに影響された、
アール・デコに、親しみを感じるからだ。
アール・デコでは、ルネ・ラリックも好きなデザイナーだ。
芸術の秋、「新日曜美術館」を視て、美術展に行きたくなった。