お彼岸

お彼岸のお墓参りは、
自らの魂を洗うことかもしれない。
ご先祖が祭られているお墓に手を合わせ、
お墓を洗うことで、なんとなく清々しく気持ちになる。
自分が今存在していることの、確認にもなる。
紅の彼岸花が秋風に微かに揺れている。


小林秀雄の「無常といふ事」にこんな一文がある。


「僕等が過去を飾り勝ちなのではない。過去の方で僕等に
余計な思ひをさせないだけなのである。
思い出が、僕等を一種の動物である状態から救ふのだ。
記憶するだけではいけないのだらう。
思い出さなくてはいけないのだらう。
多くの歴史家が、一種の動物で止まるのは、
頭を記憶で一杯にしているんので、心を虚しくして
思い出すことが出来ないからではあるまいか。」


「心を虚しくして思い出す」
墓参の折、そんな心持になることがある。