正月時代劇 堀部安兵衛


堀部安兵衛〜愛が剣豪を育てた、勇気と感動の青春期」を視る。
期待以上に面白かった。
堀部安兵衛小澤征悦)の七転び八起きの青春記が、痛快だった。
命の恩人に、最後は命を狙われる安兵衛。
そして、安兵衛を殺そう狙っていた片腕の盗賊(勝村政信)に助けられる。
今日の友が明日は敵となり、
昨日の敵が今日の友となる。
友好関係が絶対ではなく、敵対関係もまた絶対ではない。
池波正太郎の世界がそこにある。


     すべて
     五分五分という考えかた、
     これがやっぱり
     大事なんだと
     ぼくは思うね。


五分五分という言葉に、池波正太郎の価値観がある。
叔父と甥の契りを結んだ、菅野六郎座左衛門(松方弘樹)が、
「明日の命はわからぬ、だからこそ今を大事にするのだ」
そんなことを語っていた。


青年安兵衛は、挫折を繰り返す。
恋人お秀(松尾れい子)に裏切られ、折角の仕官の機会も失う。
踏んだり蹴ったりの青春を生きる青年安兵衛。
それでも、安兵衛は、様々な人々との一期一会を通して成長する。
剣のみならず、人格も磨かれる。
愛憎と挫折が、安兵衛の剣と人格を磨く砥石となったのだ。
高田馬場の決闘」では、命の恩人であり、
心の師でもあったこともある、中津川祐見(宇梶剛士)と死闘となる。


伊佐子役の新妻聖子が、初々しい演技をしている。
若かりし頃の吉沢京子のようだ。
池波正太郎の「剣客商売」の三冬のように、初めは男装の剣士として登場する。
安兵衛のことで冷かされ、はにかむ姿が愛らしい。
男装の剣士を装いながらも、乙女の純情の伊佐子。
新妻聖子は、中越典子と同じく「王様のブランチ」出身の女優だ。
ミュージカルでも活躍している演技派でもある。
北村和夫も燻し銀の演技であった。
堀部安兵衛役の小澤征悦も、熱血漢を好演している。
堀部安兵衛」は、見ごたえのある新春時代劇であった。