愛の流刑地


愛の流刑地」の後半、30分だけを視る。
高岡早紀の入江冬香は、天女のエロスが漂っていた。
「殺して」
と、情事の極みに懇願する冬香。
村尾菊治(岸谷五朗)はその願い通り、冬香を絞殺してしまう。
冬香は、昇天する。
愛欲が頂点に達するとき、自らの肉体も無化される。
生命を昇華させる冬香。
高岡早紀は、どことなく吉祥天女のような面はがする女優。


冬香は理屈ではなく、子宮感覚で生きる女性。
誘惑する男が、いつしか誘惑され、
やがて修羅の雪崩が起きる。
男の理論の脆さ、
女の業の凄まじさ。


高岡早紀が、女優として円熟してきた。
着物が似合う、大人の色香ある女優になった。
彼女の、「風の盆」や花火での浴衣姿が、艶っぽい。
ただ、私は、映画「越前竹人形」の若尾文子の色香に、
より惹かれるが・・・・・
若尾文子に、日本女性の『色香』を感じる。
けして、『色気』ではない。


高岡早紀のデビュー当時、岡田真澄と共演した、
マドラス」のコマーシャルが印象的だった。
岡田真澄とのダンスが鮮烈だった。


青春時代読んだ、渡辺淳一の小説に「阿寒に果つ」がある。
「阿寒に果つ」は衝撃的だった。
主人公の時任純子は、神秘的な魅力ある少女だった。
天才少女画家、時任純子の奔放な恋愛と、
不可思議な自殺。
この小説は、実際に渡辺淳一の高校時代の体験に基づいている。


渡辺淳一は、女性の不可思議さを見事に描く。
また、医者として医学的見地からも女性を解剖する。
渡辺淳一の描く女性は、二律背反に引き裂かれる。
「阿寒に果つ」の時任純子も「愛の流刑地」の入江冬香も。
激しい愛と無常観が点滅し、
いずれも、不可思議な死を遂げる。


この「愛の流刑地」が、日経に連載されていたことが話題になった。
愛の流刑地」は、男達の女性への、愛と幻想の情熱の賜物なのだろうか。