寅さんと愛の流刑地


韓流ブームが席捲する日本で、心と体を通してこそ、
男女の恋愛はあるんだとの主張が、「愛の流刑地」に、
見えてくる。
プラトニック・ラブとか純愛ではなく、
心と体を一体にしてこそ、愛は成立する。
冬のソナタ」に代表される、韓流的恋愛とは、
一線を画する渡辺淳一の世界がある。


私は、抽象的な表現だが、男と女、異なる性の、
弁証法が「恋愛」ではないかと、漠然と思う。
男と女の止揚によるジンテーゼ


高岡早紀演じる、入江冬香の情事の果ての死を、
川島なお美演じる、クラブのママは同じ女として、羨ましいと語る。
女として生まれ、自らを全開させ、果てた冬香は幸せだったのか。
そして、原作者の渡辺淳一は冬香に何を託したかったのか。


渡辺淳一の映画の極北に「男はつらいよ」がある。
人生のどちらかといえば、裏街道を歩む寅さん。
そんな寅さんだが、「男はつらいよ」に濡れ場はない。
しかし、男女の機微を、寅さんとマドンナの恋愛を通し、
知らず知らずに私達は理解する。
渥美清演じる寅さんと、浅丘ルリ子演じるリィリィのやり取りは、
切ないまでにいじらしい。
分をわきまえる故の、もどかしさ。
相手を察するという、日本人の心がある。


水と油のような渡辺淳一山田洋次の世界。
愛の流刑地」を視て、なぜか寅さんを思い浮かべた。