詩心


詩心ー永遠なるものへ 中西進著を読む。


この本の中で、「夜を原点とする風景」に魅かれた。
杉山平一の詩集『青をめざして』の美しい詩を紹介している。


      「闇」


    ルームライトを消す 
    スタンドランプを 消す    
    そうして
    悲しみに灯を入れる
 

『時間が闇を深めていくに従って、作者自身も活動の世界から休息の世界へと
移動していく。
夜の部屋の明るさも、まずは大きな光源が消え、
手元の小さな灯りも消される。
すると残るのは闇。
しかし、闇は心の中の悲しみを浮かび上がらせ、小さな灯りのように心に宿る。
 夜をこれほど美しく、しかも的確に歌った詩も珍しいだろう。』


詩心ー永遠なるものへ 中西進

中西進の適切な解説。


次に、私が感じた杉山平一の「闇」の感想。
闇に、自分の身体を丸ごと抱かれているような気持ちになることがある。
闇は時に、漆黒の恐怖を与え、またある時は柔らかなベールとなる。
闇があるからこそ、灯りが映えるのだ。
杉山平一の「悲しみに灯を入れる」というフレーズ。
闇の静けさの中で、自己を見つめる作者。
私には、作者の内省的な眼差しを感じる。
闇の中だからこそ研ぎ澄まされる心象の世界。
そうして、中西進の解説の通り、「闇は心の中の悲しみを浮かび上がらせ、
小さな灯りのように心に宿る。」のだ。