読書

波の塔

松本清張の「波の塔」のこんな文章に、魅かれる。 「頼子だけがいると思ってください。ほかには誰にもいないんです。 あなたと頼子とだけが・・・・・」 頼子は、言いかけた唇を自分で小野木の上にふさいだ。 濡れたあとの冷たい唇だったが、内側は火がつい…

怪傑ウーマン

塩野七生は、怪傑ウーマンである。 怪傑とは、不思議な力を持つ、すぐれたひとの意味で、 往年のヒーロー「快傑ハリマオ」などで使われている。 ただし、「怪傑」の「怪」でなく、「快」の字で「快傑」となってはいるが・・・ 塩野七生の「男たちへ」を読ん…

カムイ外伝

「カムイ伝」一巻と「カムイ外伝」一巻を読んでいる。 白土三平の抜忍、カムイが主人公の忍者漫画。 「カムイ伝」は、漫画雑誌「ガロ」に連載され、テレビでも放映された。 アニメ「カムイ」の主題歌「しのびのテーマ」は、水原弘が歌っていた。 どこか、カ…

実朝の詩魂

小林秀雄の「実朝」吉本隆明の「源実朝」から印象に残る文章を引用する。 『悲しい心には、悲しい調べを伝えているのだろうか』 小林秀雄著 「実朝」 『もし実朝が中世における第一級の詩人であったとすれば、 本質的な意味での詩人実朝という意味は、しりぞ…

女は跳ねて鮎(あゆ)になる

小説家高橋治は、女性の科白を一筆書きの絵にする。 艶やかな黒髪のような毛筆で・・・ 女であることを、 恋人の都築に全身で訴える、えり子の科白は見事だ。 「・・・・こんなこと・・・・自分で・・・・おかしいけど・・・・ 綺麗な体を・・・・してたのよ…

波の塔

松本清張の「波の塔」のこんな文章に、魅かれる。 「頼子だけがいると思ってください。ほかには誰にもいないんです。 あなたと頼子とだけが・・・・・」 頼子は、言いかけた唇を自分で小野木の上にふさいだ。 濡れたあとの冷たい唇だったが、内側は火がつい…

和解

疲れ切ってはいるが、それが不思議な陶酔感となって彼に感じられた。 彼は自分の精神も肉体も、今、この大きな自然の中に溶込んで行くのを感じた。 「暗夜行路」 志賀直哉著より 山登の途中、激しい腹痛のため、生死を彷徨う主人公、時任謙作。 謙作は動けな…

本の衝撃

世にタレント本というものがある。 写真が多く、あまり文章の内容のない本の代名詞になっている感がある。 そんなタレント本のなかで、全く違った光彩を放った本がある。 山口百恵著の「蒼い時」と矢沢永吉著の「成りあがり」だ。 共通しているのは、作者の…

絵本

エリック・カール作の絵本「はらぺこあおむし」を読む。 アメリカ・グラフィックアート協会賞受賞作。この絵本のお話は、 生まれたばかりのあおむしが、おなかがぺこぺこで、 りんご、なし、すもも、いちご、オレンジ、とつぎつぎと、たべてゆく。 あおむし…

鈍感力

今日は、休暇を取る。 外は雨。 のんびり家で、寝たり音楽を聴いて過ごそうと思う。 何もしないことも一日。 井上陽水ではないが、「白い一日」あるいは「白いページ」 の時間も芳醇な時空となる。 ビッシリと書かれた予定に満足を感じることがある。 やるこ…

絵本『100万回生きたねこ』

佐野洋子の絵本、「100万回生きたねこ」を読む。 『100万回も しなない ねこが いました 100万回も しんで、 100万回も 生きたのです。 りっぱな とらねこでした。』 こんな文章で、この物語は始まる。 このとらねこは、けして他人を愛さない(…

詩心

詩心ー永遠なるものへ 中西進著を読む。 この本の中で、「夜を原点とする風景」に魅かれた。 杉山平一の詩集『青をめざして』の美しい詩を紹介している。 「闇」 ルームライトを消す スタンドランプを 消す そうして 悲しみに灯を入れる 『時間が闇を深めて…

風の盆恋歌

今回は、この小説の重要な花、酔芙蓉の書かれているくだりを紹介する。 「スイフヨウがお好きですか」 「スイフヨウ?」 思わず聞き返した。 「あの花です」 「・・・・ああ」 答えはしたが、いかにも答える頃合がずれた。 「酔う芙蓉と書きます」 主人公の…

風の盆恋歌

高橋治著、「風の盆恋歌」を読んでいる。 現在進行形で、読んだ生の感想を書いていこうと思う。 読書のライブだ。 読みながら、感じ、感じながら、考え、考えながら書いていく。 読書感想といった、読後の本の感想ではなく、ライブ感覚の読書感想だ。 今日は…