言えなくて


クラス会の帰り道、勇介と和美は、二人きりになっていた。
飯倉の少し奥に入った坂道。
ビル越しには、東京タワーが輝いていて見える。


「あの日和美、急にキスしただろう」
「まだ覚えているんだ」
「うん」
「ひとことが言えなくて勇介に」
「え・・・」
「好きって、ひとことが言えなくてキスしたの」


少しタワーが潤んで見える勇介だった。