出世街道


「昇格おめでとうございます」
新年度になり人事異動があり、
得意先の挨拶に伺ったとき、
新任の課長にそうお声をかけた。
課長は、笑みを浮かべながらも少し気恥ずかしそうだった。
大学院を卒業され、学究肌の方だっだ。
長く係長の時代が続いたが、今回の昇格はうれしかったのだろう。


会社では残業が付くのは係長までの事が多い。
課長からは固定給。
給料の逆転現象。
しかし、「給料減っちゃうよ」
と言いながらも、係長から課長になり、
管理職になることは会社員にとっては大きなステップアップだ。
その先に、部長職、役員というポジションがあるのだから・・・・
まさに出世街道の胸突八丁。


昇格して新しい名刺を頂くと、
配りたくなるものだ。
私もそうだったし、それが人情だろう。


以前役員になられた得意先の方から、
課長昇進のとき真新しい名詞を頂いたことがある。
「課長御昇進のとき、名刺をいただきました」
もう20年近く前のことだが、
その話をするとその役員の方は、
嬉しそうに目を細めれる。
もしかしたら、役員に昇任された時より、
課長に昇格された時の方が嬉しかったのかもしれない。
ふと、そんなことを思った。