100万回生きたねこ


3年ほど前に、絵本「100万回生きたねこ」を読んだ。
「輪廻転生」「自己愛」そんな言葉が漠然と浮かんでいたのと、
妙にとらねこの緑石色の目がこちらを見透かしているような、
そんな錯覚に襲われた。


原作者の佐野洋子さんが亡くなられて、
本棚から「100万回生きたねこ」を取り出し読み返してみた。
傲慢で、自己愛に満ちた100万回死んで、生きたねこが、
自分に興味を示さなかった白ねこに好意を持ち、
寄り添い、子どもをもうけ、やがて二人きりになり、
年老いた白ねこは動かなくなる。
とらねこは大きな口を開けて号泣する。
この号泣するとらねこの絵が印象的だ。
飼い主に飼われていたときは、
クールなねこだったが、白ねこを愛してからは、
感情を表に出すようになる。
まさに愛する白ねこが動かなくなり、
のどちんこを全開にして泣く。
やがて白ねこに寄り添いながらとらねこも動かなくなる。
そして二度と、とらねこは生き返る事はなかった。


さて、この主人公のとらねこの視点は、
作者である佐野洋子さんの視点でもあるのだろうか・・・・
そんなことを考えていた。
国王・船乗り・おばあさんと飼い主はとらねこを愛していたが、
ことごとくとらねこは、その飼い主を嫌っていた。
とらねこはシニカルのようにも映る。
どんなに飼い主がとらねこを愛していようが、
とうのとらねこは飼い主が大嫌い。
相思相愛にならず、そんなことを知らずに、
飼い主は死んだとらねこを悲しみの中で埋めてやる。


だれにも飼われなくなり野良猫になり、
初めて他者を愛することを知ったとらねこ。
ほんとうに生まれ変われ(Reborn)たのは、
他者を愛し、愛する者の死によってであった。
とらねこは二度と生き返らなかった。


ただ、あまり理詰めで考えない方が、
余韻が残っていいのかもしれないな、
それが正直な読後感でもある。