[エッセイ] 苦い思い出


私は生命保険には苦い思い出がある。
10年近く前だろうか、
バブル期に加入した保険の見直しをしつこく生保レディにされて、
自宅への電話や一方的な資料の送付などがあり、
その都度、当時テレビコマーシャルで宣伝していた保険を売り込もうとした。
このままでは埒があかないと考え、直接生保レディの方とお会いすることにした。


営業の提案は、
現行の保険を下取りして、
全く新しい保険に転換するというものだった。
確かテレビで女優が騎士になっているコマーシャルの保険、
その保険に転換するように、
本当に熱意を込めて話していた。
その都度「お客様のために・・」
と話していたのが印象に残っている。


私から彼女に質問したのは、
「現行の保険は終身の主契約の予定利率は5・5パーセントですが、
ご提案されている保険の主契約の予定利率は2パーセントを切っていますよ。
どうして不利益になりかねない、
現行の主契約まで転換する提案をされたのですか?」
「むしろ予定利率の高い主契約はそのままにして、
特約の変更を提案されるなら話は分かりますが、
ただやみくもに転換を前提にこの保険はいいんです、お客様のためです、
と話されても説得力を感じません。」
そんな話をした記憶がある。
生保レディは黙り込んでしまった。
しばらくするとまた同じようにこの新しい保険がいかに優れているか、
「お客様のためにぴったりの保険」だと繰り返していた。
営業の女性の話を聞いているうちに、
なんだか宗教の勧誘を受けているような気持ちになってきた。
こちらの質問に対する返答もないので、
「もう連絡しなくて結構です」
ときっぱりお断りした。


当時は各社が逆ザヤになっている保険の見直しをしていた時期だった。
特にお宝の予定利率のいい終身の転換をする提案が多かったようだ。
生命保険は住宅ローンに次いで高額な買い物になる。
40歳で月々2万円支払えば、
男性の平均寿命の80歳では24万×40年=960万になる。
総額1000万近くのまさに高い買い物なのだ。


私はどうもこの出来事以来、
生命保険会社に懐疑的になってしまったようだ。
最近は色々な生保の方とお話しするようになり、
頑な気持ちも氷解しつつある・・・