届かなくなったラブレター


先日、外資系の生保の副部長が何年かぶりに会社に訪れた。
彼は40代半ばの元ラガーマンで体育大出の偉丈夫だ。
私と同じ東京の大田区で育ったところに親近感を覚えた。
初めての訪問の際、手ぶらだったので、
外資系だなとなんとなく思った。
ところが今回の訪問では、ゼリーをお土産に頂いた。
そしてある思い出が甦ったのは、
「毎年一度は訪問してもよろしいですか」
という彼の発言だった。
しばらくの沈黙の後、
「私も副部長のお話を聞かせていただいて、
勉強になりますからどうぞお寄りください」
と応えた。


初めて副部長と話した席で、
印象に残ったのはラブレターの話だった。
「毎年誕生日にはお手紙を送ってよろしいでしすか」
「男からのラブレターじゃ、嬉しくないでしょうけど」
そんな話をしていた。
大事な得意先の紹介だったのである保険に加入した。
成約して2年間はラブレター?が私の許に届いたが、
3年目から届かなくなった。
彼からのラブレターは、
「届かなくなったラブレター」になっていた。


ラブレターが届かなくなったのは、
年払いの保険料の2回目が振り込んだ後だったので、
継続率が達成されたからかな・・・
そんなことも漠然と考えた。
継続率はある一定期間の間で、
保険解約があると営業マンにペナルティが科せられる制度。


営業は狩人だ。
次々に獲物を求める。
しかし農耕のように種から丹念に育てる作業も大切だ。
自分の利害だけでは人脈は枯れてゆくだろう。
正直に言えば、約束を履行せず、
困ったときだけ訪問しても心は動かない。
会社も大切だが営業マンの人柄も見る。
私は愚直な人柄に好印象を持つ。
「巧言令色」には自然に眉唾になってしまう。



今回の訪問は彼を助けた。
タイミングが良かった。
実は、新しい契約どころか、
現行の保険についても減額を検討していたからだ。