2015-05-03 朧月 ショートストーリ ブラインドを開け九鬼は月を見た。 今宵の月は潤んだ朧月。 きれいな月だ。 沙希にもこの月を見せてあげたい、 そんな思いが九鬼の胸の泉の波紋となった。 「何故わたしには試練ばかり訪れるのかしら」 「神様はいじわるね」 そんなことばを呟いた沙希。 この月を眺めたら沙希のこころも少しは癒されるのだろうか。 「がんばってるんだね、君は」 朧の月が沙希の顔になる九鬼だった。