お茶漬けの味


ふと目に留まったことば、
それは映画監督の小津安二郎のこんなことば。


  なんでもないことは流行に従う
  重大なことは道徳に従う
  芸術のことは自分に従う


「芸術のことは自分に従う」
とは完璧主義者の小津監督らしい流儀だと思う。


小津安二郎の思い出は、大学時代に映画通の友人が
「映画は小津安二郎がいいね」
「あの渋さがたまらない」
そんなことを話していたが、
ジジ臭いやつだなと思っていた。
映画評論家白井佳夫解説の「日本映画名作劇場」で観る小津監督の作品は、
何れも抑揚のないのっぺりとした印象だったからだ。
しかしどこか小津の作品は「お茶漬けの味」のような、
忘れられない懐かしさを覚える、そんな味わいのある映画だった。
昨今、わたしも人生のお茶漬けの味が少しは分かってきたような気がする。