「わたしは冬の花なの」
「さざんかとか椿のような」
春に生まれた沙希は少し遠くを見るような目で呟いた。
「最後に咲くのは冬の花だよ」
そう言って九鬼は沙希を見つめた。
「最後に咲く花って・・・」
問い返す沙希は、
九鬼のことばをつかみかねていた。
「春夏秋って花は咲くけれど、最後に花を咲かせるのは冬の花じゃないか」
謎解きのように九鬼は応えた。
沙希は思った。
「このひとが冬の花を咲かせてくれるのかしら。
いいえ、もっと素敵なひとが咲かせてくれるかも・・
でも冬の花は、苦難があってもそれがたとえ運命でも、
自らの力で花を咲かせる。
春や夏、秋の花とは違うわ。」