関の彌太っぺ彼岸花


   暮六や
    関の彌太っぺ
       彼岸花


季語は彼岸花で秋。


長谷川伸原作、映画「関の彌太っぺ」のラストシーンを俳句にしました。


お小夜(さよ)を置いて旅人彌太郎(やたろう)は飯岡一家との決闘に向かう。
こちらはひとり、敵は多勢。
多勢に無勢の命のやり取り。
暮六(くれむつ)の鐘が約束の時間。


「旅人さん〜」
お小夜が叫ぶ。
「おいらの望みは妹のところに行くことかもしれません」
「妹さんがうらやましい」
事情を知らす無邪気にうらやましがるお小夜。


結城関本生まれの旅人は、
人呼んで、「関の彌太っぺ」
親を亡くしたお小夜の命の恩人だ。
彌太郎の計らいで、裕福な旅籠の養女となったお小夜。
11歳の少女だったお小夜は、花のような娘に成長していた。


彌太郎はやくざな渡世人
暮れ六つの鐘が鳴る。
決闘に向かう彌太郎。
道の辺には真っ赤な彼岸花が咲いている。
彌太郎のこの先を暗示するかのように
彼岸花は別名、死人花とも・・・


「関の彌太ッぺ」は長谷川伸原作の戯曲。
山下耕作監督で1963年(昭和38年)映画化され、
中村錦之介(萬屋錦之介)が関の彌太ッぺを主演。
美しい娘に成長したお小夜を若き日の十朱幸代が演じている。
股旅映画の傑作だ。


島津亜矢絶唱「関の彌太ッぺ」も感動的な歌謡舞台。