俳句の母
「風の道」松本澄江主宰が、去る三月一日にご逝去された。
ひな祭りを待たないでの、八十四歳の命終を遂げられた。
松本先生は、私にとって、謂わば「俳句の母」であった。
不肖の弟子である私を励まし、激励してくれた。
先生と初めてお会いしたのは、
二十年程前、日本橋茅場町の、とある喫茶店であった。
当時勤めていた広告会社は、茅場町にあり、
その喫茶店に、コーヒーをよく飲みにいった。
そうこうしているうちに、私は店の馴染みの客になっていた。
松本先生も、しばしばその喫茶店に足を運ばれており、
「俳句に興味がある若者がいる」と店主のママさんから、聞き及んで、
先生が私に会ってみたいということになり、俳句のお見合いとなったのである。
先生のお話を伺ふうち、俳句に対して、文学に対しての情熱に、
圧倒されたのを覚えている。
「風の道」の創刊直後であり、先生も精力的に活動されていたのだろう。
体験入学として、京橋の句会に参加させていただいたのを覚えている。
殆どの方が、私の父母の年代の方たちであった。
なんとなく二十代の私を、好奇の目で見ているような気がした。
『 青林檎 かしずき食めば 汝のかほり 』
そんな句を投句したと思う。
「青林檎を齧ると、恋人のような、甘酸っぱい香りがした。」
そんな俳句の内容であった。
今思うと、少々感傷に流されているのを否めない。
しかし、意外にも先生にその俳句を、褒めていただいたような記憶がある。
褒めていただいたことで、率直にうれしかった。
先生との、俳句を縁とした、お見合いは成立する事となった。
21世紀に、日本の伝統文芸である俳句を、継承させたい。
その先生の願いに応えるには程遠い私ではあるが、
これからも、「継続は力」を実践し、俳句、或いは広く文芸に、
取り組んで行きたいと思う。
松本澄江先生のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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