即身仏と春着の子

テレビ東京の土曜スペシャル「にっぽん名山紀行」
"月山・・・信仰の山里に残る風習と絶景の雪山"を見て、
印象に残った場面と私の創作をまじえて、俳句にした。


 法螺貝の木霊するなり雪解風
(ほらがいの こだまするなり ゆきげかぜ)


季語の雪解風(ゆきげかぜ)は、雪を溶かす暖かい風。
若い修験僧の法螺貝が、羽黒山に鳴り響く。
雪深い、霊峰月山にも春風が吹く。
修験僧の法螺の響きが、雪の壁を震わせ、草木の芽吹きを呼び覚ます。
そして、人々の心も温もる雪解けの季節。
月山、羽黒山湯殿山出羽三山への篤い信仰は、三神合祀となり、
人々に連綿と受け継がれている。
道の辺に、斧を持ったお地蔵さまが、祭られている。
村人は、お地蔵さまにお祈りをして、山に入る風習がある。
猟や山菜取りの安全と、豊かな山の幸に恵まれるように、
山の神に、敬意を表すことを、怠らない。
そこには、山の神、自然に対する畏敬の念がある。
自然をコントロールするといった、不遜な考えはない。


 春着の子即身仏の微笑めり
(はるぎのこ そくしんぶつの ほほへめり)


季語の春着(はるぎ)は、
春になると、軽やかな、明るい服を着るようになること。
春になり、即身仏が奉られている湯殿山の神社にも、
春着の子供もお参りに来るだろう。
それを、即身仏も温かいほほえみで、迎えるに違いない。
即身仏は、信仰と人々の幸せを祈り、生きながら成仏した僧である。
現世に残された姿は、ミイラであるが、魂は衆生救済の仏である。
即身仏になられた僧も、健やかな子供たちの成長を、見守っているだろう。


宮崎駿の「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」にも描かれているように、
日本には独特の自然信仰がある。(アニミズム
それは、自然への畏れの感情である。



★人気blogランキングへ★