「迷うが人」毒付く子りん

兵糧攻めにあった三木城の人々は、極度の飢餓状態に苦しむ。
「血を流さずに城をおとせた」と一豊(上川隆也
キィと一豊を睨み、
「槍や刀で血を流すのと、どこが違うんだ」
子りん(長澤まさみ)は、声を絞り上げ抗議する。
祖父、祖母の時代、日本にも飢餓があった。
太平洋戦争で、石油を始めとする物資が、アメリカなどの、
連合国側に阻まれ、日本は極度の食料不足になった。
大岡昇平の「野火」には、戦争により極限の飢餓状態になった、
人間の業が描かれている。
60年前の日本に、現実として飢餓が存在した。
一豊と千代が生きた、遠い昔の戦国時代の話ではない。
それ故、子りんが代表する庶民の叫びは、真実の叫びだ。
私たちとて、いつ、三木城の子りんのように、
飢餓に見舞われるかもしれないからだ。
子りんは、誠実で一途な一豊に、好意を抱いた。
権謀術数の忍びの世界、そして時代はまさに下剋上
人の裏の裏を見てきた子りんに取って、
真実一路の一豊の存在は、新鮮に感じたのだろう。
その一豊が、次第に、為政者の考えになりつつあることを悟り、
子りんは、そんな、心変わりした一豊を見なくて幸せだと、
毒付く。
毒付く女は、繊細だ。
繊細な心を持て余すゆえ、つい心許せる人に毒付く。
一豊もそうした、いじらしさを汲み取る、
心の余裕があれば・・・・
やはり、千代(仲間由紀恵)の膝枕が、
一豊の心の故郷なのかもしれない。


*毒付く女で、可愛いのは「男はつらいよ」のリィリィ(浅丘ルリ子)だ。
寅さん(渥美清)に心を許しているから、つい甘えて、毒を吐いてしまう
それを、寅さんも許してしまう。
寅さんとリィリィに共通しているのは、惻隠の情があることだ。
人の情けを忘れないことだ。




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