私には今しかない


桜子(宮崎あおい)と達彦(福士誠治)が、二人でピアノを弾くシーンは、
微笑ましく、切ない場面であった。
竹下景子のナレーションが、流れる。
「幸せな時間でした。そして悲しい時間でした」
達彦との幸せな時間、しかし、達彦は出征する。
二人にとっては、今生の別れになるかもしれない。
だからこそ、悲しい時間でもあるのだ。
「有森が隣にいて、なんともいえない気持ちになった
 この人たちと家族になりたいという気持ちになった
 俺が帰るまで待っとってくれないか
 帰ったら、一緒になってくれ」
有森家の皆の前で、達彦は桜子にプロポーズする。


今回の「純情きらり」は、少々ドキドキする場面があった。
桜子(宮崎あおい)と達彦(福士誠治)のラブシーンは、
胸のボタンを外す桜子に、大胆な女性の一面と、
純情な、恋するな娘の姿を見る思いがした。
そんな桜子に、入営をする達彦は優しく諭す。
「ダメだよ、明日はどうなるかわからん」
桜子は、達彦に熱い心情を吐露する。
「そうだよ、明日はどうなるかわからない
 私には今しかない
 私をもらってください」
くちずけをする、桜子と達彦。
そんな桜子に達彦は
「生きて帰ってくる」
と約束する。
月明かりの河。
切ないまでに叙情的な、線香花火の場面が印象に残った。


出征式に臨む達彦は、頭を刈り上げていた。
桜子と達彦は、目と目で最後の別れをする。
「なんだか立派すぎて達彦さんじゃないみたい
 兵隊にとられるっていうのはそういうことだったんだね」
一人になった桜子は、ピアノを見つめる。
「君がどこかでピアノを弾いているそれだけが支えです」
達彦の思い出が、めくるめき、桜子はむせび泣くのだった。


戦争、身分、昔は、男女の恋には様々な障壁があった。
明日の生死がわからない、戦争の中、桜子と達彦は愛を育む。
一緒になることを、約束するふたり。
昭和15年夏、その1年後、太平洋戦争が開戦される。
時代は、軍国主義の靴音が身近に響いていた。
今回は冬吾(西島秀俊)の出番が少なかった。
冬吾は、入営する達彦を見送ることはなかった。
冬吾の、軍国主義への、ささやかな抵抗だったのだろうか。


*白いドレスの桜子が達彦の前で、はにかんだのが、
 恋する娘らしくかわいらしかった。


*伝説のドラマ、「赤い疑惑」を思い出した。
 白血病の幸子(山口百恵)が光夫(三浦友和)に
 「今すぐ愛して」と、迫るシーンがあった。
 光夫は、達彦のように優しく諭したような気がする。


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