功名の旗

吉兵衛(武田鉄矢)が戦死した。
山内一豊家臣、五藤吉兵衛」
山内家柏紋の旗を突き刺し、一番乗りの声を上げた吉兵衛。
敵陣に功名の旗が翻る。
一豊(上川隆也)に抱かれながらの吉兵衛の最後。
主君に看取られ亡くなるは、吉兵衛のような忠君一筋の
武士にとっては、家臣の誉れであったろう。
そして、何よりも吉兵衛にとって、一豊は息子同然の存在であった。
その息子の手の中で息を引き取った吉兵衛は、
幸せ者だったのかもしれない。
自分の死期を、察したかのように、
吉兵衛は一豊に父親のような、教訓を残す。


「一国一城の主になるには、素直なだけではいけませぬ」
「家臣には燃えるようなお言葉を」
「吉兵衛、新右衛門亡き後は、お方様をお頼りくださいませ」


吉兵衛とたき(細川ふみえ)の恋も、
ようやく武骨者の吉兵衛のプロポーズで実るかに見えたが、
吉兵衛の死で、たきの想いは露と消える。
私が、たきに好感を持つのは、日常の細々な出来事に、
幸せを感じる女性であることだ。
人に愛情を与えることで、自らも喜びを感じる、
だからこそ、人に優しくなれる。
そんな質素な女性を、細川ふみえが好演している。
吉兵衛とたきを母親のように見守っていた千代(仲間由紀恵)は、
血に染まった吉兵衛の手紙を読み、滂沱の涙を流すのだった。
滅私奉公の人五籐吉兵衛は、平成の世ではアナクロニズムに映る。
風車を敵と見紛うた、ドン・キホーテのようだ。
だだ、そんな吉兵衛の愚直な生き方に、ある爽やかさを感じる。
愚直の人、吉兵衛の一豊へのいまはの言葉は
「殿、一国一城の主におなり・・・・」
であった。
父の遺言に勝るとも劣らぬ、
五籐吉兵衛の言葉「一国一城の主」の成就を、
一豊は律儀に守ることとなる。


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