来ぬ春を待ちわびて

「達彦と連弾していた曲弾いてくれる。」
かね(戸田恵子)の願いを聞き、
達彦(福士誠治)と婚約した記念写真を前に、
山長の半纏を身につけ桜子(宮崎あおい)はピアノを弾く。
達彦は、幻となり、桜子の前に現れ、
優しく、そっとピアノに触れる。
そして、母かねも達彦の幻を見る。
達彦の思い出に、咽び泣く母かね。
『音楽は思い出を喚起する』
ふたりの愛する女性に達彦は、メッセージを送りにきたのか。
かねは、「達彦は死んだ。」と呟く。
桜子は、「私は、まだ達彦さんを死んだとは思っていません。」
と、達彦が生きている望みを捨てない。
かねは、桜子に達彦を忘れ自由に生きるように諭す。
それが、達彦の意に叶うことだと。
ただ、桜子に山長を任せた以上、
桜子は、自由にならないのではないだろうか。
桜子を山長の暖簾から解放しないかぎり、
真の自由は難しいのではないか。
そんなことを、考えた。
達彦の望みは、桜子が音楽を続けること、
ピアノをあきらめないことだ。
今生の別れの曲を歌う桜子、
「埴生の宿」が切ない。
桜子は、お母さんと呼んだ人と、永遠の別れとなる。


*「埴生の宿」は、原題(Home! Sweet Home!)
「土で作った粗末な家」の意味。
 英国のヘンリー・ビショップが1852年に作曲。
「植」とは、土の意味。
 映画、「ビルマの竪琴」「火垂るの墓」でも使われた唱歌


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