秋風や越中おわら風の盆

秋風と共に、風の盆の季節がやって来た。
9月1日、二百十日の初秋、哀愁の胡弓が、八尾の町に響く。
目深な編笠の女衆の優美な踊り。
男衆の力強い張りのある踊り。
艶やかな町流し。
何処かで、輪踊りも始まる。
舞台踊りに、見物の人垣。
「キタサノサーアー、ドッコイサノサッサ」
ハイヤ節のお囃子。
洗練された踊り。
哀切の胡弓の旋律が、女の夜鳴き歌に聞える。
夢か現(うつつ)か三味の音。


石川さゆり歌う「風の盆恋歌


 遅すぎた 恋だから

 命をかけて くつがえす

 おわら恋唄 道連れに


私はこの、なかにし礼作詞の、
「命をかけてくつがえす」
という詞に、女の情念を感じる。

陽の祭り。
陰の祭り。
晴と褎(け)
「虚」と「実」が、目くるめく。
私の昏(くら)き血脈が疼く。
魂の暗闇に、響く胡弓の音色。
神仏に、導かれるように、
町流しの踊り子たちは、影法師となり、
やがて、酔芙蓉のように儚げに、暗闇に溶けて行く。