素材を生かす


料理を作るとき、よく素材を活かすということが言われる。
肉、魚、野菜、そうした食材その物のもち味、食感、色彩などを、
料理を作るなかで、失うことなく活かし調理することだ。
どうしても調理の過程で、必要以上の調味料の使用、
あるいは、手間を省くことで、素材の持ち味を壊すことさえある。
人の才能を伸ばすことは、こうした素材と料理と同じく、
特段の配慮が必要なのかもしれない。
音楽ではモーツァルトの父、テニスのシャラポアの父。
ゴルフの宮里藍横峯さくらもしかりだろう。
それぞれ父は、名伯楽だ。
それぞれの素材を生かし、才能を伸ばしている。
弁証法的親子関係。
才能がアウフへーベンし、花開く。
息子や娘の素材(才能)を大切にし、
それでいて、厳しく導いている。
才能を見抜くだけではなく、その才能の適切な磨き方ができる。
調味料ずけの料理が、大味なように、
いたずらに、スパルタ教育をしても、素材の持ち味が生かされない。
映画監督などは、まさに才能発見の狩人であり、料理人でもある。
俳優という素材を見出し、育て、開花させる。
私たちは、そうして制作された映画を堪能するのだ。
素材を生かすとは、なかなか言うは易し、実行するのは困難だ。
やはり、昔からの習いだが、生かし生かされる。
そんなことが、肝要なのかもしれない。