苦い思い出


今週の「どんど晴れ」は「柾樹の孤立」
老舗旅館、加賀見屋の経営改革を急ぐ柾樹(内田朝陽
魚の仕入れのことで、昔堅気の板長と激しく対立する。


柾樹は、加賀見屋の経費削減の為、
無駄な仕入れをしないよう板長に指示するが、
板長は、頑として従わない。
板場の「悪しき慣習」を断ち切ろうと、奮戦する柾樹。
急激な改革に戸惑い、反発する加賀見屋の人々。
孤立する柾樹。
夏美(比嘉愛未)もそんな征樹を心配する。
心配しながらも夏美は、あまりに性急な手法を取る柾樹を批判する。


「夏美を巻き込みたくない」
と、一見優しい柾樹の言葉だが、
柾樹の発想は、あくまでサラリーマンのもの。
自営業の経営は、夫婦、あるいは、家族で力を合わせなければ成り立たない。



そんな中で、板長が怒り心頭となり、
突然、加賀見屋を辞める。
加賀見屋は、食事が作れなくなり、窮地に追い込まれる。
大女将カツノ(草笛光子)の、「加賀見屋の人間で力を合わせて解決する」
その言葉で、
心を一つにして事に当たり、難局を乗り切る。
女将の環(宮本信子)も、女は板場に入らずの忌避を破る。
それは、お客様第一を思っての、女将としての決断だった。


「和」とは、しがらみにもなり、絆にもなる。
しがらみは悪、絆は善。
悪しき慣習は、しがらみで、加賀見屋の難局を切り抜けた団結は絆。
ある意味、しがらみも、絆も「和」であり、「情」なのではないか・・・
快刀乱麻を断つが如く、一刀両断に白黒の判断は、できないなと思う。
「和を以って貴(たっと)しとなす」
聖徳太子の、言葉の意味は深い。



私も印刷会社の新入社員の頃、職人さんと仕事をしていた。
当時、私は営業マンだった。
ある日の夜、仕事を一杯取ってきて、
意気揚々と帰社したとき、
「おまえは、俺達を殺すつもりか」
と現場主任に怒鳴られた。
職人さんにしてみれば、
山のような仕事を、夜にを持ち込まれたら、
徹夜仕事になってしまう。
少しは、営業も現場を考えろ、といったところだったのだろう。


私が、「私も一緒にやりますから、よろしくお願いします」
と、頼み込むと、
現場の責任者が、「わかった、おまえが取ってきた仕事だ、がんばるよ」
と、言ってくれた。
普段、無口でほとんど会話をしたことない責任者の温かい言葉に、
私は、胸を撫で下ろしたのを今も覚えている。


今週の「どんど晴れ」「柾樹の孤立」を視ていて、
新入社員時代の、苦い体験を思い出した。



*夏美役の比嘉愛未のブレス(息継ぎ)が少し気にかかる。
マイクが、演技中の、彼女のブレスをよく拾うことがある。
セリフとセリフの合間のブレスを、意識的にした方が、良い場面も確かにある。
ただし、安易なブレスは、耳障りになるので、気をつけねばならない。