Hand in Hand


「手、暖かいんですね」
「わたしの手って、冷たいでしょう」



由紀子は九鬼と手を繋いで囁いた。
会議の後、慰労会でのこと、
由紀子はいつになく陽気だった。
よく飲みよく話していた。
50代の由紀子ではあったが、
小奇麗な彼女は年長のおじさま達のマドンナ的存在だった。
今日も隣に座った社長が由紀子にずっと話しかけていた。
酒席の途中で九鬼は会議の疲れが出たのか眠くなり、
頬杖えをついてうとうとしていた。
そんな飲み会もお開きになり、
駅までの道をそれぞれ歩いていた。
いつのまにか九鬼と由紀子は並んで歩いていた。
そのときふと手と手がふれて由紀子が九鬼の手を握ったのだ。
どちらからともなくふたりは手と手を離していた。
そして何事もなかったようにふたりは歩き始めた。
由紀子は家路に向かい駅へ、
九鬼は二次会のネオンの街に消えて行った。